フラグアンテナの考察をしている国内・海外の情報を集めてみました。

①Flag Theory   Dallas Lankford
 
 フラグアンテナは一般に感度が大幅に低いと言われています。

 コンピューターシミュレーション等で分析している人々で
 そう主張する人が多いです。しかし実際に実験すると分かるはずですが、
 実は、そう考えられているほど感度が悪くないということを理論的に解析しています。
  (この点では③とは違う立ち位置にあります。実証結果を元にそれを解析する
   理論を作っています)

 数式等が多いですが、要するに、
 ・カーディオイド型指向性のゲイン…a と
 ・2つのDipoleのフェーズドアレイ構成により、生じるロス…b
 ・2つのDipole(フラグ)がもたらす熱雑音の増加…c

  の3点に分解して、ゲインがさほど小さくないということを物理学的に証明しています。

  aで方向面に向かったゲインは、対磁界ループ比で約2倍のゲイン、
  他方bとc合わせても、そのロスは、約3分の2程度に留まることから
  磁界型ループ比でも、半分程度のゲインが確保出来る。よって
  フラグアンテナの感度はそれほど低く無いと説明しています。
 
 この①は、フラグアンテナ=
   2つのDipoleのフェーズドアレイ構成
  という仮説をベースに構成しています。

  ①の数式では、大きさが小さくなっても定数がある分、フェーズドアレイとしての
  動作は保たれること、インピーダンスマッチングでダイポールとの感度差もさほど
  無いこと、ゲインロスはあってもそれほど大きくは無いこと、等が示唆されるので
  結果として、小型にしても、それほど性能が落ちないということが示唆されるわけです。
 
   勿論これらは決定的な証拠が無いので証明とは
   なりませんが、定数的効果もあるということが数式上示唆されていて、
   周波数やエレメントの大きさに左右されずに安定稼働する部分があるというのが
   面白いところです。(この定数に注目したのが私の④の仮説になっています)

②FLAGS, PENNANTS AND OTHER GROUND-INDEPENDENT LOW-BAND 
 RECEIVING ANTENNAS Earl W. Cunningham, K6SE

 
  EWEアンテナがアースの出来不出来に左右されるため、アースの出来に左右されない
  安定稼働するアンテナを求める試行錯誤がされたこと、そしてその試行錯誤の中で
  フラグアンテナやペナントアンテナがローバンダーから見出されてきたということが
  分かりやすく書かれています。

③HAM Journal No.100 1995年12月

  ローバンド受信用小型ビーム、Ewe(逆U)アンテナをシミュレータで解析
   小型ビーム・ループ・アンテナの研究 JF1DMQ 山村 英穂
       
  実証に基づいた論文ではありませんがEWEアンテナのシミュレーションを間違えて
偶然フラグアンテナ(小型ビーム・ブーム・アンテナと呼称されています。)の
シミュレーションをしたところ、FB比の特性が良いということがきっかけで詳しく
シミュレーションしています。

上記の雑誌は絶版ですが、
  こちらに著者のフラグアンテナのコンセプト概要が記載されています。

   The mechanism was that, the Small-Loop-Beam(Flag antenna)  is a pair of dipole,
   (中略)
The two dipoles act as a phased array, (中略) The parallel wire section does not 
   radiate, but the two dipoles does. cardioid directivity is created. 

    スモールループビーム(フラグアンテナ)=
      ダイポールがペアになった組み合わせで
      水平の部分は機能しない
      2つのダイポールがフェーズドアレイとして動作
         =カーディオイド型の指向性が作られる。
   
       この説明は、上記①の説明とも整合性があります。
  
後日山村先生からメールをいただき次のような説明をいただきました。


「アンテナ工学ハンドブック」には昭和44年の論文が参照されており、ループに抵抗を入れると指向性が出ることは古くから知られておりました。

FLAGアンテナの動作原理を明確にされたのは山村英穂OMでした。2つの垂直ダイポール部ダイポールの両端を接続するフェーズライン(ここでは受信しない)による空中線で中波から短波帯でのカージオイド型の指向性を実現する広帯域受信用アンテナです。

ここで多くのOMの方が、フラグアンテナは、ビバレッジのような 「進行波型アンテナだ」と誤解してしまいます。しかしご存知のとおり、進行波アンテナは、線上の進行波電流が進むにつれて(同時に)輻射して行くアンテナですが、フラグの上下2本のエレメントは相殺しほとんど輻射しないので進行波アンテナでは無いのです。
 
進行波アンテナとしてのビバレージとの動作の違いは、slow wave effectの介在有無です。地表に近い部分では、地面が導体なので(電気を流すので)、水平編波(電界が水平)が存在せず、垂直編波しか無い(ほぼ)状態なので本当に垂直成分しかないと、電線を水平に張ったビバレージでは受信ができませんが、地面は抵抗を持っているため地表近くの電波は進むスピードが遅いため、地表の「遅れた電波」に引っ張られて電界が進行方向に傾きます。(Zenneck 効果、あるいは Zenneck の表面波)こうして、水平成分が出るので、水平に張った線でビバレージは受信できるわけです。

しかし、フラグアンテナは自由空間でビームが出ます。地面は必要なく、slow waveZenneck 効果は不要です。進行波アンテナとしてのビバレージとは動作が違います。

ダイポールは波長とは関係なく、形状で成り立つものなのです。
電線を2本張ったら、電圧が出ます。
よって受信できます。

このとき、電力の伝達の良否は別問題です。
SWRが良ければ沢山電力が来るでしょうし、SWRが悪ければ、少しの電力しか来ません。

でも、伝達効率は落ちるとしても送信できるし、受信できます。

ところで送信のときにはSWRの良否が大問題です。

ところが受信のときには事情が違います。SWRが悪いときにはフラグアンテナでの信号も弱まりますが、外来フロアノイズも同様に弱まるので、実は受信時のSN比は通常のダイポールと変わりません。

受信機内やプリアンプの内部雑音(セットノイズ)が外来フロアノイズより少ない範囲であればSWRの高いダイポールでも受信できます。10MHz程度以下の外来フロアノイズは、セットノイズは20dBか30dB上(HF)、あるいは40dBから60dB上(MF、LF)でしょうから、SWRが悪くて、電力の伝達が-20dBから-60dBでも受信可能です。増幅が20dBなら、SWRは400でも同調したダイポールと同様であり、40dBならSWRは4万のダイポールであってもいいのです。
 
更に、送信では、同軸ケーブル(通常、50Ω)に対するSWRです。もし、受信側プリアンプの入力に600Ωを使えば、もっとSWRは低く、電力伝達(感度)は良くなります。非常に高いインピーダンスのアンプで受ければ、アンテナに誘起した「電圧」は増幅できます。つまりフラグアンテナは電圧増幅型のアンテナです。SWRが高くて電流がほとんど流れないので、電力は小さいのですが、電圧があって、高いインピーダンスで受けるプリアンプで増幅ができて、必要なSN比が得られるなら受信できます。

ハイインピーダンスで、広帯域に受信すると、非常に強い信号と、DXの弱い信号が、同時にアンプに入るので、歪み特性(ダイナミックレンジ)が問題になってきますので今回のフラグアンテナではWellbrook社のFLG100を使用しております。
 
フラグアンテナで、前方へのビームが出るのは、ダイポールアンテナの打ち消しの結果です。終端抵抗を変えるとこれができるのです。ですから、終端抵抗は可変にして、現場で調整するのがよいでしょう。


理論は色々の説明がありますが、とにかく不思議なアンテナです。フラグアンテナは面白いアンテナです。